「終曲(フィナーレ)を
こんなにはっきり予想して
川は大きくなる」
「水底のかわいい魚たち」
「岸辺のおどけた虫たち」
「中洲の可憐な小鳥たち」
「河は歌う さよなら」
「筑後平野の百万の生活の幸を
祈りながら川は下る 有明の海へ
筑後川 筑後川 その終曲(フィナーレ) ああ
突然、情景が浮かび、閃きと共に歌詞の意味が分かった。
・・・・「河口」。
混成四部合唱曲。
高校1年生の時、入学して1番最初に行われる合唱祭の自由曲で歌った曲だ。
この1年生の時のクラスはとても不思議なクラスだった。
初めて顔を合わせた時から昔から友達だったような、おしゃべりが飛び交うクラスだった。
合唱祭は課題曲と自由曲を歌うことになっていた。
指揮者を選ぶ時、自分の前の方に座っている男子生徒がいきなり振り返り「〇〇がやれよ」と言ってきた。即座に決まってしまい、自分はそれならと「なら〇〇やれよ」と自分も、とある男子生徒を指名し、これも即座に決まった。
自分もその男子生徒も指揮者の経験などない。
しかしやることになったので、とりあえずやることにした。
練習は音楽の授業の時もあったが、基本的には放課後や昼休みを使って練習した。
中学の時から洋楽が好きで、やはりドラムが好きだったからか、リズム感は良かったようだ。
譜面の意味など先生や分かるクラスメイトに聞きながらやった。
リズム感が良かったからか、クラスメイトが戸惑う箇所は、「ここは、タッタタ、、」というように黒板に書きながら説明して進めて行った。
課題曲は校歌で、あろうことか、混成四部合唱曲でかなり本格的に作られた校歌だったようだ。
なのでパート練習などもしながら練習していった。
ある時気付くと、他のクラスからこっそり覗いている生徒がいて、その時は特に気にしなかったが、後になってその意味することが分かる。
指揮者として課題曲の指揮をやりながら自由曲の練習もしていったが、どうやら音楽の先生も期待していたようで、特に自由曲の「河口」は、とあることを提案されていた。
来る日も来る日もクラス一丸となって練習し、いよいよ本番当日を迎えた。
恐らく大方の人が経験していると思うが、合唱祭は全学年の生徒がやるので、会場は当然大きな会場となる。
1年生から始まるが、いよいよ自分達の番となった。
まずは課題曲の校歌から。
全員並び、自分が指揮者の位置に立ち歌が始まった。
大体良い感じで進んだが、とある箇所で、歌のスピードがピアノより速くなりかけた。
その時、自分は無意識に笑顔になり指揮をとり続けた。
するとまた良い感じに戻り、課題曲は終わった。
次が自由曲。
ピアノと指揮者が入れ替わり、歌が始まった。
歌っている時もだが、あっという間に終わった感じだった。
歌い終わり、皆はけていった。
その後2年生、3年生と歌ったが、3年生の中に同じく自由曲で「河口」を歌うクラスがあった。
ただ、審査で順位を付けるが、順位は学年毎になっていた。
全学年の合唱が終わり審査の時間となった。
皆で「大丈夫かな、、、」など不安な胸のうちを話していた。
そして審査が終わり、いよいよ発表となった。
事前に各学年の上位3位までのクラスは「盤」に収録され販売することが発表されていた。
そして、1年生の部から発表された。
下位の順位から発表されて行くが何位から発表されたかはうる覚えなので書かない。
途中ため息が漏れるのが聞こえてくる。
そして第3位。
〇〇組!
歓声と共に代表が壇上へと駆けていく。
自分達のクラスはもう固唾を飲んで沈黙していたが何となく予感はあった。緊張はピークとなる。
第2位。
〇〇組!
歓声と共に代表が壇上へ。
そしていよいよ第1位。
〇〇組!!
一瞬の静寂の後、自分達のクラスはもう皆んなで抱き合いながら歓声をあげ女子は殆ど泣いていた。
すぐに何故か、〇〇行けよ!と自分が名指しされてそのまま壇上へと駆けていく。
自分は予感はしていたもののまさかという感じもあり、他のクラスの人に「俺たちそんな上手かった?」と聞くと2位と3位の人は頷きながら「上手かった」と言っていた。
そして表彰状が読まれて、自分が受け取ると、自分でも意図してなかったが、ふいに、くるりと向きなおり、会場のクラスメイトに向かって表彰状を掲げた。
クラスの皆んなもまた大歓声をあげているのが目に入った。
後に女子のクラスメイト達から言われたのが、課題曲の時の笑顔。
「あの笑顔で救われた〜」と。
こうして第1位という結果になり、合唱祭は幕を閉じた。
その後「盤」となったのを皆購入し、特に仲の良い男子生徒で集まり、すぐに聴いてみると、歌っている時は気付かなかったが、第1位になるだけの歌を歌っていた。
そして聴いていて、自由曲を歌い終えると、会場からどよめきと共に大喝采が聴こえてきた。
それを聴いた自分達も、「すげ〜!」とびっくりしていた。
合唱祭の練習の時に、自分が気付いた覗きに来ていた生徒は、別のクラスの某吹奏楽団に所属している生徒で、後に自分が吹奏楽部に入ってから指揮も担当することになる同級生だった。どうやら練習の時から上手かったらしく観に来ていたようだ。
そして音楽の先生からとあることを提案されていたのは、自由曲に関してで、1つは半音下げること。
これによって高音が非常に綺麗に出ることに繋がった。
もう1つは最後の「このフィナーレ、あ〜あ〜」の部分で、「このフィナーレ、、」のところで敢えて凡そ二拍あけて、その後「あ〜あ〜」の部分もやや伸ばして歌うことで、フィナーレとしての感動を最大化出来ることに繋がった。
確かに3年生の同じ「河口」を歌ったクラスより、自分達のクラスの方が上手く聴こえた。終わり方もドラマチックだった。
こういうことを音楽の先生が提案して来たのも恐らく自分達のクラスに期待してくれていたのだと思う。
余談だが、自分達が2年生になった時の合唱祭の時、この時は既に自分達のクラスメイトはかなりバラバラにされて別々のクラスになっていたが、何故か自分は音楽の先生(吹奏楽部の顧問)から呼ばれて、1年生のクラスに指揮を教えて欲しいと言われて、言われるがままに教えに行った。
その後吹奏楽部でパーカッションはしていたものの指揮は一切しておらず、教えに行ったはいいが、何をどう教えて良いか分からないまま指揮を教えた。
とにかくこの1年生の時のクラスメイトとの思い出は非常に濃密なものがあり、また別の機会に書くかも知れない。
とにかく思い出深き高校1年生の合唱祭だ。
※「河口」
作詞:丸山 豊
作曲:團 伊玖磨
(歌詞は混成四部合唱曲「河口」より引用)
※ 版権の都合で歌詞全文は載せられないことをご容赦下さい。