おばちゃんのTボーンステーキ

先日夢を見た。

どこやら分からない市場で、母親と肉を買いに行った夢だ。

自分が探し求めていたのは、牛肉の中でも、サーロインとヒレが両方味わえる、Tの字の骨がついた、Tボーンステーキだ。

切った肉の断面にTの字に骨が付いている。

夢の中ではまだ小学生で、色々話しているのは何故か大人の自分という、夢ならではのものだった。

このTボーンステーキ。

自分が小学生の頃、2ヶ月に一度くらいだろうか、叔母からお呼ばれされ、良くご馳走になった。

叔母の作るTボーンステーキは、自分が今まで生きてきた人生の中で、最も美味しいと今でも感じるステーキだった。

食べたら感激する美味さだった。

叔母は特に料理屋をしていたという訳ではないが、料理は他に美味しいものばかりだった。

特にこのTボーンステーキを良くご馳走になったが、天才と言っても過言ではない。

叔母はどうやら肉の一番美味しい食べ頃を知っていて、買って来てすぐには調理しなかった。

よく『おばちゃん、まだなの?』と聞きに行くと、『まだ待っててね』と随分日にちを待たされた記憶がある。

ニンニクをつけて、他にも何か付けていたのか聞いてなかったが、塩加減があるので、食べる時に自分の塩加減を調整して食べた。

その美味しさは、間違いなく、お店が出来るレベルのものである。

というより、きっと予約待ちが出るほど大人気になっただろう。

美味しいなんてものではない。

本当に感激ものであった。

何せ行儀は悪いが、食べ終わっても、骨までしゃぶっていたほどだった。

そこに付け合わせで、煮た人参とコーンをつけて、白米と一緒に食べていた。

焼き加減も自分の好みに合わせてくれて、今日はミディアム、今日はミディアムレアとか、自分の要望通りに焼いてくれた。

焼いた肉の切り口は要望通りで、よく雑誌やテレビなどに出てくるような赤いが生ではないちゃんと火の通った焼き方だ。

食べる前から口の中のヨダレは半端なかった。

一度、叔母が買って来た肉を、自分の母親に焼いてもらったことがあったが、とてもではないが比較にならなかった。

夢の中では、中々良い肉が見つからず、肉の業者に色々伝えて探してもらっていた。

結局、業者が肉を見つけたであろう時点で夢のから覚めてしまった。

せめて食べる所まで見たかった。

その後、大人になり、様々な所で頻繁にではないが、ステーキを食べたが、あの小学生の頃のおばちゃんの作ったステーキを越えるものに出会ったことはない。

今考えると、いわゆるエージングビーフのように熟成させていたのだろう。

それを当時から知っていたのである。

今でもあの味はしっかり覚えている。

とにかく想像を超える美味しさだ。

夢に出て来るのは初めてだが、それだけ美味しかったということだろう。

夢に出てきたおばちゃんのTボーンステーキ。

あんな美味しいステーキには、もしかしたら今後一生出逢うことはないかも知れない。

すっかり忘れていたおばちゃんのTボーンステーキ。

今はおばちゃんはもういないが、また作って欲しい。

自分の第二のソウルフードと言っても過言ではない。