マグロの刺身

自分が小学生の頃、父親の出身地である、とある県に行った時のこと。

夕飯時で、父に連れられとあるホテルで夕食を食べることになった。

ホテルの料理かと思いきや、そのホテルにある寿司屋に入った。

父は適当に色々注文したが、その中にマグロの刺身があった。

よく見ると、自分が食べたことがあるマグロと違う色をしている。
後々分かったのは、マグロの『ヅケ』、つまり醤油にある程度の時間浸したマグロだった。

食べた瞬間びっくり。

『すごい美味しい』

自分は基本中トロ辺りが好きだが、その赤身のヅケは、赤身なのに旨味がすごく、今まで食べたマグロの中で一番美味しいと思った程だった。

そしてそれから年数もたち、父の地元の用件で、またそのホテルに行くことになった。

そして赤身のヅケの美味しい店ということは覚えていたので、また赤身のヅケを頼んでみた。

やはり旨い。

旨いなんてものではない。

この頃は既に社会人で、漫画の美味しんぼの単行本も相当購入して持っていたので、食べ物の知識も読んでいるうちに、いつの間にか増えていた。

なので、そういうこともあり分かったのが、この赤身の刺身のヅケは、ヅケだから旨いこともあるが、そもそもマグロの赤身自体が旨いのだ。

この赤身のヅケの刺身は、仕入れ先から良いマグロをみつくろって仕入れているのもあるだろうが、恐らく、仕入れて新鮮なうちに出しているのではなく、ある程度『寝かせて』、旨味成分が出てから出しているため、良いマグロを、いわば熟成させてから出しているから旨いのだと思う。

これは肉と同じで、新鮮だから旨いという訳ではない。

色も良く見ると通常見てきたマグロと色が違っていた。
当然ヅケなので、醤油の色が付くが、それとは違う色をしていた。

その後会社の転勤で北陸に異動したため、それこそ氷見寒ブリや、蟹やら甘エビ、赤身のマグロも食べたが、北陸という海に近い地域なのに、そのホテルのマグロの刺身のヅケを超えるものに出会ったことはない。

一体どうやって仕入れていたのか忘れたが、確か当時の築地に行って仕入れていたのだと思う。

とにかく北陸に居ても食べたことがないマグロの赤身のヅケの刺身だった。

たまたまテレビを観ていてマグロのことが出て来たので、ふと思い出した。

しかし恐らくもう行くことはないだろう。

関東から数時間かけていく場所ではないからだ。

しかし、もし機会があれば、また行こうと思う。

とにかく比較出来ない旨さのマグロの赤身のヅケだった。