それはこの場所に通って結構経ってからの出来事だった。
車で散々ランガン(釣ってはポイントを車で移動し、また釣って移動することを繰り返すこと)していてもいっこうに釣れなかった時のこと。
この頃はいい加減、ここにバスはいるが、釣れないかも知れないと諦めかけていた。
どこへ行ってもアタリすらない。
幾らバスフィッシングが好きで、忍耐強いと言ってもアタリすらないと嫌になる。
釣っている場所はこの場所へ流れ込む川で、川といっても流れはなく、川一面が水草に覆われている。
ここにはルアーは落とせないが、少し先に水草がない部分があり、そこで釣りをしていた。
見た雰囲気はいかにもバスが居てもおかしくないが、ルアーをキャストしても反応はない。
1つの釣り方として、ラバージグというルアーにトレーラー(針の部分にソフトルアーを引っ掛けること)としてデスアダーの3インチを付けて試していた。
ラバージグは殆どやらないが、もうやることは尽くした感じだった。
秋とはいえ、この時は肌寒く余り期待出来ない。
キャストしてはズル引きという、要は水底にルアーをズルズル遅く引いてくるやり方で引いていた。
もうこの場所も無理かな…と思ったその時、微かに、本当に微かに「コン…」と、アタリがあった感じがした。
すかさず合わせたその瞬間、かなりの重さを感じたと同時に、それが左右に動いて逃げいく。
「バスだ!!」
リールを巻きながらバスとの格闘が始まる。
何せこの場所で初めてのバスだ。
いやがおうにも心臓の鼓動は激しくなる。
ロッドはメガバスF6-67X。初めて購入したメガバスのロッドで、名古屋のルアーショップで、半年待ちで手に入れた。
話がそれるが、このF6-67X。
名古屋から引っ越す際に引っ越し業者のバイト君がこともあろうに竿先を折ってくれた。
しかも自分が気付いたのは結構後になってからだった。
この引っ越し業者は引っ越す際、マンションの8階から服の入ったプラスチックケースも落としている。
折れていることに気付いた際の怒りはそれはそれは凄まじかった。予約するのでさえ数ヶ月待ち、予約してから半年経ってようやく入手したロッドだ。それだけでメガバス人気が分かる。
すぐ電話して弁償させたのは言うまでもない。
話を戻すが、胸の高鳴りを感じながら、バラさないように慎重に格闘して、バスを岸の上に引っ張り上げた。
やり取りしている時からデカイとは思っていたが、釣り上げてみると、思った以上にデカイ。そして太い。
その太くて大きい魚体をみて、ロッドごとその場に置いて車に走る。
メジャーとデジカメを取り出し走って戻る。
すぐ測ると48センチ。
過去に釣り上げた最高記録は40センチ。
河口湖ではせいぜいそんなものだ。
写真を撮った後、しばし魚体を持って眺める。
惚れ惚れするような太くて大きいバスだ。
そして、何よりも重い。本当にズッシリと来る。
心の中で「ヨシ!ヨシ!」と叫びながらガッツポーズをしていた。
興奮して少し長く陸にあげていたため、魚が弱ってしまった。
静かに魚体を水面へつけて、丁寧に扱い、泳ぎ出すのを待つ。
バスが回復してゆっくりと泳ぎ出すと手を放してリリースした。
そしてバスに「ありがとう」と言って見送った。
ようやく釣り上げたこの場所のバス。
サイズ、太さ、重さ、初めてにしては申し分ない。
ここのバスは釣れないと諦めかけていたが、これで釣れることは分かった。
今後のこのフィールドでのバスフィッシングに希望の火が灯る思い出深い貴重な1匹との出会いとなった。
※全て実話です。