以前名古屋に転勤した時、同じ課に女性が1人だけ居た。
実はその女性、東京に居た時に幕張本社の自分が仕事上絡んでいた企画の課長代理から、「名古屋支店に転勤なんていいなぁ。だって〇〇がいるもん」と言われていた女性。
自分は東京で社長直轄の部署にいたが、その課の実行部隊としての出先機関である名古屋支店の課にその女性がいた。
一度東京で全国の出先機関の代表が集まって会議をした時に見かけたことはある。
確かにかなり可愛い。
そしてスタイルはモデル並みの8頭身美人。
出るとこは出ていて引っ込むとこは引っ込んでいる。
企画の課長代理が言わんとしていることは分かる。
名古屋支店に転勤になったこの時、自分が直販の営業をしていた時の同じ営業部にいた後輩が居た。
その後輩と2人だけで飲んだ時、誰にも言わないで下さいと念押しされ、その後輩がその女性のことを好きで付き合いたいと思っていることを伝えて来た。
その後、事あるごとに自分に色々報告してくる。
今度花火大会誘ってみます、行って来ました…などなど。
そして付き合うことになったことを伝えて来た。
誰にも言わないで下さいの範疇に入るのは、その当の女性も入っていた。
つまり、後輩はその女性にも自分と付き合ってることは話さないで下さいと言っていた。
同じ課でしかも頻繁に2人で出掛けて仕事をしている。
時には出張で静岡県に行ったり、岐阜県に行ったりしている。
当然仲良くなる訳で、自然とプライベートのことも話す。
しかし、自分は後輩から言わないで下さいと言われているので、一切知っている素ぶりすら見せなかった。
ある時石川県に2人で前乗りで出張した時のこと。
17時には金沢のホテルにチェックインしていたので、その後2人で夕食に出掛けた。
当然酒も飲む。
歓談しながら夕食が終わった後、その女性から自分に「〇〇〇、この後どうする?飲みに行く?」と言われた。
この女性は2つ下だが、仲が良かったので、自分のことを「〇〇〇」とあだ名で呼んでいた。
飲みに行くかと聞かれても、飲みに行く訳には行かない。
やはり後輩と付き合っているし、余り親しくするのも良くないというかなんというか。
なのでこう答えた。
「いや、昇格試験の勉強があるから、やめておくよ」
そんな感じで何かと他にもこの女性と絡んで仕事をし、泊まりの出張も度々あった。
そんなある時、後輩から内密にということで伝えられた。
「遂に結婚することになりました。色々ありがとうございました。
まだ皆さんに言う段階ではないので、また近々話せる時が来たら、皆さんにということで伝えます。とりあえず〇〇さんだけにはお伝えさせて頂きます」
その後、女性と2人で金沢に出張に行った帰りの特急しらさぎの中で、女性から言われた。
「〇〇さん、すみません、今まで黙ってましたが、実は私は△△さんと付き合っていたんです」
そう言われた自分は、今、突然聞かされたという表情で、少し眉間にしわを寄せて、少し怒り気味に言った。
「何で言わなかったんだ」
「ごめんなさい、会社の人には言わないようにしていたんです。噂が広がるとまずいので」
「……分かったよ」
「それでまだ言わないで欲しいんですけど、多分結婚すると思います」
「そうか、それは良かった。おめでとう」
名古屋支店に転勤して来て1年以上過ぎている。
2人のことは全て後輩から聞かされている。
当然ながらその女性に、自分が後輩から聞いてることなど気付かれてはいない。
そして結婚式にも招待され、2人はめでたくゴールイン。
2人の新婚生活が始まった。
結婚式から3か月程経ったある日。
その女性は結婚してすぐショールームへと異動となり、名古屋支店の一階に席を置いていた。
ショールームの女性達とも自分は仲が良かったが、課としてもショールームと絡むことが多く、かつ組織的には課としては違うものの、うちの課長がショールームの上司にもなっていた。
そんなこともあり、ある日ショールームの女性達とうちの課の皆で飲みに行くことになった。
たまたまその女性が自分の隣の席に座った。
飲みも進んで来た時、結婚してからもうこれだけ過ぎたし、後輩からも知っていたことを女性に伝えてもいいですと言われていたので、伝えても問題ないだろうと考えて、女性に話し始めた。
「〇〇さぁ、今だから話すけど、〇〇と△△のこと、実はおれが転勤して来た時から△△から全部聞いていたのよ。噂になると困るので話さないで下さいと言われてたし、〇〇にも話さないでと言われてたから話さなかったけど、実は全部知ってたんだよ」
その時の顔が凄かった。
「!!…感動……!!」
そう言ったきり、口に手を当て絶句して目を見開いて驚きと感動と喜びが混じった顔をしている。
そして笑顔になって話し出した。
「えー!信じられない!!ずっと知っていたんですか?!」
「そうだよ」
「えーー!うそぉー!…」
何やら自分と一緒に出張に行ったりした時のことを思い出している。
「えー?!…だって…。マジですか?!」
「マジだよ」
「全然気付かなかった!!」
「だから言ったじゃん。おれの口はダイヤより堅いって」
こうして、図らずも自分の口はダイヤモンドより堅いことが証明された。
自分の強みとしての客観的な証拠がある、「口の堅さ」。
どうだろう…。
強みとして第三者に話しても差し支えあるまい。